「ノベルティ」と検索すると、いまは販促品・記念品の意味で使われることがほとんどです。しかし、やきものの産地・瀬戸で「ノベルティ」といえば、陶磁器でつくられた置物や人形のことを指します。
同じ言葉が、まったく違うものを指している——この記事では、瀬戸でいう「ノベルティ」とは何か、なぜ瀬戸で発展したのか、そしてその技術がいまのオリジナル陶器づくりにどうつながっているのかをご紹介します。
ノベルティという言葉の、ふたつの意味
| 一般的な「ノベルティ」 | 瀬戸の「ノベルティ」 | |
|---|---|---|
| 指すもの | 企業が配る販促品・記念品 | 陶磁器製の置物・人形 |
| 目的 | 宣伝、販促 | 飾って楽しむ |
| 使う人 | マーケティング・販促の担当者 | やきものの産地、収集家 |
紛らわしいのですが、産地では後者の意味で長く使われてきました。そして興味深いことに、この2つは技術的には地続きです。企業のノベルティとして陶器の置物や器をつくる仕事は、まさに産地が積み上げてきた技術の延長線上にあります。
瀬戸ノベルティとは
瀬戸ノベルティとは、瀬戸で作られた陶磁器製の置物・人形の総称です。動物、少女、天使、西洋の情景——住まいを飾るための小さな造形が、輸出品として数多く作られてきました。
食器のように「使う」ものではなく、飾って楽しむためのやきもの。だからこそ求められたのが、自由な造形力と、細部まで作り込む絵付けの技術でした。
なぜ瀬戸で発展したのか
瀬戸は良質な陶土に恵まれ、やきものの産地として長い歴史を持っています。素地をつくる土、型をつくる職人、絵付けをする職人、焼成する窯——ひとつの造形を完成させるために必要な工程が、産地の中にすべて揃っていたことが、複雑な立体物を量産できた理由です。
ひとりの作家が一点をつくるのとは違い、産地では工程ごとに専門の職人がいます。だからこそ、手のかかる造形を、品質を保ったまま数を揃えられる。これは産地でなければ成立しない仕組みです。
立体をやきものにする、という難しさ
皿や碗のような回転体と、人形や動物の造形とでは、必要な技術がまったく違います。立体物ならではの難所を3つご紹介します。
1. 型をどこで分割するか
複雑な形は、そのままでは型から抜けません。どこで型を割れば、形を損なわずに抜けるか——この設計そのものが職人の技術です。分割の線は仕上げで消しますが、そもそもの割り方が悪ければ美しく仕上がりません。
2. 焼くと縮むことを見越す
やきものは焼成すると縮みます。つまり仕上がりのサイズより大きく作らなければならない。しかも縮み方は土の種類や形状によって変わるため、狙った寸法に収めるには経験が要ります。
3. 支えのない部分が垂れる
焼成中、粘土はやわらかくなります。突き出した腕や薄い部分は、そのままでは垂れたり歪んだりします。形を保ったまま焼き上げる工夫が、造形ごとに必要になります。
こうした知見の蓄積が、瀬戸という産地の資産です。図面や写真から立体を起こせるのは、この積み重ねがあるからです。
ノベルティの技術は、いまのオリジナル陶器へ
置物や人形をつくる技術は、そのまま「食器ではない、自由な形のやきもの」をつくる力です。私たちが日々ご相談をいただくオリジナル陶器の多くは、実はこの延長線上にあります。
- さのまる君のラーメン丼 — キャラクターを立体で成形した器。
- 調味料を注ぐ女 — 人物造形をそのまま実用品にした一例。
- フィギュア付きマグカップ — 器と造形を組み合わせた形。
- 眠り猫の香炉 — 動物の造形と実用を兼ねたもの。
- キャラクターオブジェ・壺 — 飾るためのやきもの。
いずれも既製品への印刷では作れない、形そのものからつくったやきものです。キャラクターの立体化、企業ロゴを形にした置物、製品をかたどった記念品——「こんな形はできますか」というご相談が、私たちの日常です。
いまも瀬戸で、つくっています
錦松竹は、瀬戸で100年つづく窯元が運営するオリジナル陶器の製作窓口です。企業のノベルティ・記念品から、キャラクターの立体化、飲食店のオリジナル食器まで、産地の型づくりと絵付けの技術で形にしています。
ラフスケッチや参考画像だけの段階でも構いません。「立体にできるかどうか」の判断からお手伝いします。